【毒舌独女】恋の大火事、焼け野原
ラットを使った、こんな実験があった。
父親が同じで、母親が別の親子を、数組、同じゲージに入れる。
別のメスが生んだ子を我が子同然に育てるメスも居れば、そうで無いメスも出現。
あるメスは他のメスの子を徹底的に攻撃。
自分の遺伝子をより優位に立たせるには、比較対象を抹消するのが手っ取り早いからだ。
こえー。
子どもに攻撃を加えられたメスは、当然、反撃。
こうなると、もうゲージの中は大惨事。言葉では表せられない有様。
本来メスは「守り」の性であるが、守る為には手段を選ばない性ともいえる。
ヒトはこんなコトが起きないよう、道徳、モラルを生み出した。
モラルを簡単に説明すると、周囲と争いを起こさない為のモノ。
人は一人では生きてはいけない。支えあってこそ、人間。道徳を大切にしましょうね。
モラルを大切にしない人は、トラブルのゼロ地点になる場合が多い。
対岸の火事なら面白がれるけど、火の粉を被った人はたまったもんじゃない。
「いやあ、オレ、火の粉を被っちゃった。あはは」
爽やかな笑顔でこう言うのは、某大企業にお勤めの小林くん(仮名・33歳独男)。
アンモラルな恋愛・不倫騒動で、業務が一時停止してしまったとのコト。何があったの?
「妻子持ちの彼氏が結婚してくれないって、同期の三十路女子が職場で大暴れ」
わーい。そのシチュエーションだけで、お腹イッパイ。道ならぬ恋の火だるまって感じ。
「自分に探偵を付けて、彼氏とラブラブな写真を報告書付きで、奥さんには郵送、部長には直接提出してなぁ」
彼氏を取られまいと、比較対象を抹消に出たか。抹消されるのは、本人っぽいけど。
「職場で泣き喚いた。『私たち、これほど、愛し合ってます』って」
実際には火の粉じゃなく、写真と怒声を撒き散らした模様。確かに、仕事にならん。
この所為で、小林くん始め同僚の皆さんは、滞った業務処理に一週間、早朝出勤を強いられた。
迷惑な。
で、その女子と彼氏はどうなったの?
「結局、彼氏は離婚せず、子会社に左遷。女は異動、係長に昇進した」
へ?
「ここまで騒ぎを起こしたら、本来ならクビ。けど、会社は飼い殺しに決定」
不倫カップルが所属していた部署は、顧客情報を扱っている。
騒動を起こすヤツラに、大切な顧客管理は任せられないから、左遷や異動は判る。
でも、飼い殺しって何よ?
「個人情報をばら撒く女に、顧客情報を持たせたままクビは危険」
なるほど。焼却炉に「異動」ってワケね。情報が古くなってから真っ白な灰にする方針。
さすが大企業、やるコトがエグい。
「まぁ、コイツは前からトラブルメーカーで、目の前から消えてくれてホッとしてる」
小林くんは、心底安堵の表情を浮かべた。大変だったんだねぇ。
件の騒動以外にも、この女子の所業を聞かされた。三十路女子ってのに合点が付く内容。
これって、結婚「できない」女子ってヤツかしら。
耳を傾けている内に、妙な感覚に襲われた。どこかで同じエピソードを聞いた覚えがある。
不倫を公表する女子の迷惑度の高さが、どことなく共通しているのだ。
不倫女子の全てが、周囲の迷惑になっているのでは無いよ。
不倫を公表する輩に、迷惑度の高い連中が多いというコト。
普段からモラルってのを考えていないから。
モラルよりも自分が大切。
その自分を優位に立たせようと、比較対象を攻撃し、反撃に合い大惨事。
正しくあのラットそのもの。狭いゲージの中の出来事が、現実社会でも起き得ると知る。
障害があればある程、恋は燃え上がるモノ。
だけど、他人は火の粉なんて被りたく無い。延焼もご遠慮願う。無理心中は犯罪デス。
燃え尽きるなら、どうかお一人で。
コラムニスト/コンテンツライター
広島県安芸郡出身、大阪府高槻市在住。恋愛記事から豆知識、果てはビジネス文書まで幅広く執筆するライター。古典芸能に携わっていた経験もあり、日本文化について少し詳しい。文芸春秋『週刊文春』に載せてもらえたのが人生の自慢。
>> article