【毒舌独女】キムタク神話崩壊
制作費20億円をかけたTBS開局60周年記念で、「あの」キムタクを起用し、壮大なスケールのドラマであるにも関わらず、視聴率が20%超えたのは、今の所、第一話(22.2%)のみ。
視聴者にウケる要素は、たっぷり盛り込んであるドラマ『南極大陸』。
20%は割らないモチーフがてんこ盛り。
なのに、視聴者が離れていく『南極大陸』。
よっぽど、凍てついた大陸のようだね。
では、何故、そこまで凍てついてしまったのか。
理由の一つに、物語の先が読めるという点がある。
『南極大陸』の原案になった『南極越冬隊 タロジロの真実』を記した北村泰一氏は、映画『南極物語』のモデルになった、南極越冬隊の犬係。
私と同年輩(35歳前後)以上の人であれば、『南極物語』を映画館やビデオで観た記憶があるだろう。
細かい箇所は忘れていても、南極に犬が置き去りにされ、犬の大多数が死んで、タロとジロだけは生き残ると知っている。
大体、映画とドラマの主人公の力量の差があり過ぎて、キムタクが気の毒になる。
キムタクの演技も悪く無い。
むしろ良い。
『南極大陸』は、役者・木村拓哉にとって、大きな転換になるドラマだと思う。
けれど、映画の主演は高倉健サマ。
重厚な役をやらせたら、日本随一の役者。
この記憶が、視聴者の脳裏に焼きついている。
どう足掻いても、キムタクじゃ対抗馬になれない。
では、キムタクが出るドラマなら、何でも良いと言っていた女性視聴者はどこに行ってしまったのか。
恐らく、第一話でリタイヤした。
先述したように、キムタクの演技は悪くない。
しかし、これは諸刃の剣で、従来のキムタク好きな人にとっては戸惑いを与えるものなのだ。
キラキラしたスター・キムタクではなく、『南極大陸』では、泥臭くモッサリとした、等身大のアラフォー男として登場している。
カッコイイキムタクを期待していたのであれば、ガッカリ度はかなり高い。
それに、史実を元にして作られたドラマなのに、イロイロと雑。
一言で述べるなら、お遊戯会的プロジェクトX。
必要であろう説明を省いたり、台詞が現代語と昭和の言葉のごちゃ混ぜだったりと、視聴者が混乱するような脚本。
流れとして重要な箇所を端折ったかと思うと、どうでもいいような場面を延々と流す。
見ていて、かなり疲れる。
キムタクファンは、仕事に家事に育児に疲れている年齢の女性が多い。
普段から疲れているのに、ドラマを見て疲れたくはない。
だから、『南極大陸』は見ない。
視聴率王・キムタクを支えていた、女性視聴者が離れた。
キムタク神話が、遂に崩壊した。
女性視聴者はバカではない。
良いモノは良いと言い、そうでないモノにはそっぽを向くだけの賢さは持っている。
それに、女性視聴者は欲しいモノを「欲しい」とストレートに言う。
彼女らが欲したのは、自分達の青春時代に輝きをくれた、「あの」キムタク。
手の届かない憧れの男性だったのに、今や年相応の役柄をするキムタクに、自分達の加齢を感じているのでは。
小じわを映す鏡を見たくないように、年を取ったキムタクは見たくない。
キムタクだけは、いつまでも輝いていて欲しいと願っていたのに、『南極大陸』では、自分達の知りたくないキムタクが動いている。
これがキムタク神話崩壊の本当のトコではないだろうか。
私は神話が崩壊して良かったと思っている。
崩壊後、キムタクはきっと、新たな神話樹立に我武者羅に頑張り、また面白い作品を世に送り出してくれると信じているから。
彼ほどスター性を持ったタレントは、90年代以降、出現していない。
キムタクが「スター」と呼ばれる最後のスターかも知れない。
その彼が、このまま終われる筈は無い。
一見、今風の男性に見えても、日本男児の持つ誠実さや芯の強さが垣間見えるキムタク。
約20年の間、トップを走り続けてきた体力もある。
これからは、神話第二章が楽しみだ。
コラムニスト/コンテンツライター
広島県安芸郡出身、大阪府高槻市在住。恋愛記事から豆知識、果てはビジネス文書まで幅広く執筆するライター。古典芸能に携わっていた経験もあり、日本文化について少し詳しい。文芸春秋『週刊文春』に載せてもらえたのが人生の自慢。
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