ご都合主義で厄介者?私たちが「フェミニスト」を自称できない理由
《連載「となりのビッチちゃん」》
このコラムは、性や恋愛に対して前向きな女性をあえて「ビッチちゃん」と呼び肯定し、女性のライフスタイルの多様性を考えるコラムです。
私は女性向けのAVサイトを運営していますが、性的嗜好というのは本当に多種多様。
ドラマをメインにしたソフトな内容を好む女性もいれば、複数プレイやおもちゃを使ったようなハードな内容を好む女性もいます。
つまりは、本当は「女性向け」なんてカテゴリは存在しないはずなのです。
それでも「女性向け」が支持される理由……今回はそんなことを、フェミニズムの観点から考えてみたいと思います。
エマ・ワトソンはフェミニストの敵なのか?
先月、女優のエマ・ワトソンが、乳房の一部を露出した写真を公開したということで批判を受けた、というニュースがありました。
それを聞いた私は、あのエマ・ワトソンがヌード!?と早合点し驚きましたが、写真を見てみるととんでもない、ファッション性の高いキレイな写真でした。
露出している範囲も少なく、とても上品で、「これで露出していると叩かれちゃうの?」と意外に感じました。
なぜこの写真が叩かれているのでしょうか?
批判している人の意見を見ると、「彼女はフェミニストを自称しているのに、それに反した行動をとっている」からだそうです。
これってつまり、フェミニストは女性の権利を“守る”べきという思想、つまり、女性が保守的であることを望んでいる人の意見なのではないかと思うんです。
女性が肌を露出するということは、男性に性的な対象で見られる可能性があり、女性の権利や尊厳が失われる、という考えに基づいていると考えられます。
それに対して擁護派の意見は、フェミニストは女性が自分の行動を選択する権利を持つべきだと考えている様子。
エマ・ワトソンが自分自身の選択で自分の肌を露出したことを、称賛する声も多かったです。
愛する男性には自身の肌を見せることもありますし、愛を伝えるために見せることもあるかもしれません。
露出がイコール男性に性的な対象で見られるというのは、反対に言えば男性の選択や権利、尊厳を無視した偏った考え方ともいえます。
このように、海外では論争を巻き起こしたエマ・ワトソンの写真。
一方、日本ではまだフェミニズムやフェミニストの考え方が、あまり定着していません。
というわけで今回の一件を受けて、私のまわりの同世代女性に、フェミニズムについてどう思っているかを聞いてみました。
フェミニストを自称できない様々な理由
「自分のことはフェミニストだとは思わない。フェミニストは、女性の権利だけを主張する人。不満は口にするが、レディースデーなど優遇されていることには何も言わない、ご都合主義的なイメージ」
特に日本の社会においては、女性の社会進出がうまくかなっていないという現実があるため、女性をもっと優遇するべきという意味合いで“フェミニズム”という言葉が使われる印象があります。
その主張が強い人が、フェミニスト。そう考えると、少し煙たい印象があるという彼女の意見もわかります。
一方でこんな意見も。
「(フェミニストとは)日常生活や現代社会で当たり前にされている女性特有の扱いや、女性に対する偏った考え方を、ちゃんとフラットに考えようとする人だと思う。ただ一方で、その主張の仕方が声高な人が目立つので、厄介だという印象がある」
彼女の意見を見ると、女性蔑視も女性優遇もフェミニズムではないという風にとらえているようです。
しかしここでも、一部の行き過ぎた考えが目立つという意見。
それ故に、彼女は、「たとえば『自分は仏教徒だ』というくらい確固たる信念がなければならないと思うのでフェミニストを名乗る覚悟がない」ので、自分はフェミニストではない、と続けていました。
自分はフェミニストではないと考える女性に共通しているのは、「自分には、フェミニストとして主張することがない」という思い。
しかし、フェミニズムというのは考え方のひとつであり、フェミニストは何かを主張し続ける人ではありません。
自分自身の性だからこそ、自分の中のフェミニズムにしっかりと向き合うだけでも、フェミニストと言えるのではないでしょうか。
次回は、自分をフェミニストだと自覚する女性の意見をとりあげてみたいと思います。
文・田口桃子
女性向け動画サイトGIRL’S CHプロデューサー。女性メディアDOKUJOで「となりのビッチちゃん」連載中。普段あまり取り上げられない女性の性についてのリアルを世に広めることで日本のタブーに挑戦している。
GIRL'S CHプロデューサー。
2007年、新卒でソフト・オン・デマンド(株)に入社。営業、マーケティング等の部署を経て、2012年よりGIRL'S CHの立ち上げに携わる。以来現在まで、GIRL'S CHの現場リーダーとしてサイト運営をしつつ、オリジナル動画ではレポーター出演等をすることも。
>> article