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大坂なおみは日本人?アメリカが育んだアスリートの活躍に、敗北感を覚える【芸能評論】

災害続きの平成最後の今年。豪雨に猛暑に大地震、前代未聞の台風に追加の広域大地震。

 

ありとあらゆる災害に、さすがの日本人もぐったりどんより。いつまでもこの状況は続かないと分かっていても、これだけ続くとさすがに辛い。

 

日本全体が大自然の驚異に怯え、暗く沈んでいた時、一筋の光が差し込む。

 

それは、大坂なおみ(20)の全米オープンテニスでの優勝だ。

 

日本人として初めての快挙に、日本中が湧きに沸いた。今までテニスに興味がなかった層まで、こぞって大坂なおみを誉めそやす。

 

「良くやった!」と。

 

努力が報われた人の姿を見ると、我がことのように嬉しくなるのが人の常。この「嬉しい」が生きる原動力となる。

 

思えば、東日本大震災で日本中が沈んでいた際は、なでしこジャパンがサッカーワールドカップ優勝というプレゼントを届けてくれた。

 

もしかすると、日本人が動けなくなる程、打ちのめされている時、皆が「頑張ろう」と思える贈り物をくれるのは、女性アスリートなのかも知れない。日本は太陽の女神・天照大神の国だもんね。

 

日本を元気にする明るいニュースではあるものの、一つ疑問が残る。

 

「大坂なおみを、我々と同じ日本人として扱っても良いものなのだろうか?」というものだ。

 

現在、彼女は日本とアメリカの二重国籍。テニスの大会には、便宜上、日本からの出場としているだけ。

 

そもそも、彼女を名テニスプレイヤーに育てたのは、アメリカという国だ。日本ではない。これを考えると、日本がアメリカの手柄を横取りしている気分になるのだ。

 

ぶっちゃけると、「ワシが育てた!」感が乏しい。

 

大坂なおみと日本の接点が少な過ぎて、同じ日本人として喜ぶのを躊躇ってしまう。

 

もちろん、20歳の女の子が極限までに自己を高め、世界の頂点に立ったことは嬉しく思う。称賛に値する、素晴らしいことだ。

 

しかし、「同じ日本人として」と考えると、腕組みをして唸ってしまう。

 

肌の色や見た目の問題ではない。話す言葉の問題でもない。一番引っかかるのは、彼女の偉業達成に携われた日本人がとても少ないことだ。

 

ここが、他のルーツが外国にもあるスポーツ選手と違うところ。大坂なおみを、ダルビッシュ有やケンブリッジ飛鳥と同等に見ることは出来ない所以。

 

そりゃ、練習環境は、アメリカの方が上だろう。スポーツ科学も進んでいて、エビデンスに基づいた効率的な練習をさせてもらえる。未だ根性論がはびこる日本のスポーツ界では窮屈で、芽が出なかった可能性の方が高い。

 

そんなことは分かっている。分かっていても、寂しいのだ。

 

素晴らしい結果の感動を共有するのには、その過程も共有したい。欲張りかも知れないが、これが本音だ。

 

ちょっとフランクな言い方をすると、「可愛い時期のなおみを、メリケンに取られた感じがするんだよ!」かな。あ、今も可愛いよ。念のため。

 

ただ、日本は、素晴らしい選手を外国に取られても仕方がない環境ではある。今年は日大アメリカンフットボール部のラフプレー問題を発端に、数々のスポーツ界の不祥事が吹き出している。

 

我が子にスポーツをさせたい親御さんからすると、こんなところには預けたくない。もっと良い環境でと考えた時、渡航も視野に入れるのは自明の理だ。

 

このままでは、外国に行ける環境のスポーツ選手は、日本以外の国で活躍することが増えるだろう。これはとても大きな損失だ。

 

大坂なおみは、今、20歳。国籍選択のリミットまであと2年弱だ。彼女は日本とアメリカ、どちらを選ぶのだろう。

 

どちらを選んだとしても恨みはしないが、我々日本人は選んでもらえるような国に出来るよう、残り時間をかけて努めていきたいものだ。

 

旭堂花鱗

コラムニスト/コンテンツライター

広島県安芸郡出身、大阪府高槻市在住。恋愛記事から豆知識、果てはビジネス文書まで幅広く執筆するライター。古典芸能に携わっていた経験もあり、日本文化について少し詳しい。文芸春秋『週刊文春』に載せてもらえたのが人生の自慢。

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