マツコ・デラックスに「超可愛い」と言わせた藤田ニコルの魅力【芸能評論】

最近、マツコ・デラックスが『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日系)に出演した際、SNSが普及した現代にはスターがいないという持論を展開。
これについてはインターネット上でさまざまな反響があったが、そのトークの中で藤田ニコルを「超可愛い」と語ったことも反響を呼んでいる。
藤田のファンにとっては「にこるんの魅力をわかってくれてにこるんるん♪」といった具合だろうが、多くの視聴者は疑問に思ったようだ。
マツコは以下のように語っている。
「SNSだのなんだのあって、見てる人がみんな街中で勝手にパシャパシャ撮ってやっちゃう時代にスターなんか生まれないよ」
「身近な人がありがたいスターだってアイドルだとか言われてるようになってしまったのっていつ頃?」
「面白い子だったり、チャーミングな子だったりっていうのは誕生するだろうけど、圧倒的な何かにはならんよね」
「にこるんとか超可愛いと思うのよ」
「もしにこるんが違う時代で、違う感じで出たとしたら、ああいう感じにはなってるかな?と思うんだよね」
「昔のアイドル全盛期に、もしにこるんみたいな子が出てたとしたら、普通にアイドルとしてデビューさせられて、何年かやってるうちに貫禄も出てきてとか」
インターネットやSNSが普及してしまった現代では、あらゆる情報が簡単に手に入るようになった。
情報が溢れすぎてしまうと探求心も薄れるし、ミステリアスさは見出だせない。昔に比べると有り難さや尊さは薄い。
マツコが言うように”圧倒的なスター”が生まれにくいのも納得だ。
そして、藤田はテレビに出始める前からSNSで彼氏の存在や私生活の様子をオープンにし、テレビで売れっ子になった今も積極的に発信し続けている。
なので、過去のアイドルとの比較対象として出すのはとてもわかりやすい。
しかし、藤田は本人も公言している通り”万人受けする美人”でもなければ、”滑舌の悪い独特の声”の持ち主。
1970~80年代のトップアイドルのように人々が感動する歌声や演技でお茶の間を魅了するとは考え難い。
さらに言えば、マツコは見た目や声といったとっつきやすい部分だけで人を褒めるタイプではない。
なので今回は、マツコに”超”可愛いと言わせた藤田の魅力を探っていきたいと思う。
バラエティで活躍するモデルは、おバカキャラを売りにすることが多い。
藤田も「学ぶ機会を避けてきた」と公言している通り、根っからのおバカキャラだ。
しかし、藤田はギャルモデルによくいるヤンキーでもなければ、オーバーリアクションのガツガツしたタイプでもない。
これは、藤田の生い立ちに大きく関係している。
母子家庭で育った藤田は貧しさで苦労することも多く、学生時代はいじめにあって登校拒否になったこともある。
テレビでは明るくて前向きな性格が全面に出ているが、意外に真面目な大人しい性格も持ち合わせているのだ。
1970~80年代に活躍したトップアイドルを見ていると大人しい性格でありながら芯の強い者も多い。
テレビのプロデューサーなど、製作サイドもプロデュースしやすいのでその方が都合が良いのだろう。
そういった面で、藤田は時代が時代なら、普通にアイドルとして売り出されていても不思議ではない。
ただ、当時はそれによって本人の意向に合わず無理が生じ、事務所に対して反抗的になったり非行へ走ってしまう者も今以上に多かったが、すぐ忘れ去られたりしていた。
しかし、インターネットやSNSの普及した現代では一度あった不祥事やそれについての悪評も検索すれば簡単に出てきてしまう。
テレビが情報の中心であった昔なら、少し芸能活動を休んで皆が忘れた頃に許してもらうなんてこともできたかもしれないが、今の時代はそうもいかない。
藤田はそんな現代の芸能界の状況をちゃんと理解しているので、自分が爆発しないよう、努力はしても必要以上の無理をしない。
芸能活動においていい意味で平均点以上をとらない。藤田は根っからのおバカキャラでありながら、そういった面ではとても優秀である。
さらに、藤田はモデルとしてもハーフモデルらしくない見た目や生い立ちに苦労することも多かった。
そこを大人たちから徹底してプロデュースされるのではなく、本人自身が試行錯誤し、あの現代向けのメイクや髪型などを完成させたのだ。
そして、私生活をオープンにすることで、ミステリアスさをなくして時代に合わせた身近な存在としての人気を獲得できたのである。
業界の事情を知っているマツコは、こういった藤田のかしこさ、複雑な生い立ち、ブレイクするまでの藤田の苦労を見て、”圧倒的なスター”の素質があると考えたのではないだろうか。
最近では自らのファッションブランドを立ち上げるなど、モデルとしての活動の幅を広げている藤田ニコル。
モデルのように声に左右されない活動も良いが、これからも独特の声を武器にできるバラエティでの活躍を期待したいと思う。
(文・巻川とっしゅ)
エンタメライター。お笑いとものまねをこよなく愛すアラサー女で、基本面白いことには何でも首を突っ込む性分。
BLも少々嗜んでいます。