ドラマ『ブラックペアン』、日本臨床薬理学会から抗議に賛否両論「ひどいドラマ」の声も
日曜ドラマ『ブラックペアン』(TBS系)について日本臨床薬理学会が、ドラマ内に登場する“治験コーディネーター”の仕事に関する描写が実際の仕事とは異なるとしてTBSに抗議する意向を発表した。
『ブラックペアン』は二宮和也主演の医療ドラマ。
二宮演じる「オペ室の悪魔」と呼ばれるほど技術力が高く、態度の悪い医師・渡海を中心にその人間模様が描かれている。
劇中にはスーツをまとった加藤綾子演じる治験コーディネーターが登場し、医師を三ツ星高級レストランで接待したり、治験を渋る患者に“負担軽減額”として大金を手渡し、手術の同意を得るなどの場面が描かれていた。
第2話までの平均視聴率13.1%を記録し、現クールのドラマの中でも注目作と言われている『ブラックペアン』。今後、内容が変更になる可能性も出てきてしまった。
抗議に同意する声多数「誤解されたくない気持ちは分かる」
日本臨床薬理学会は2日、TBSへの抗議文を発表した。
それによると、日本臨床薬理学会は医師や製薬企業と被験者などを繋ぐ「臨床研究コーディネーター」(CRC)という専門職を設けており、治験コーディネーターとほぼ同義。
その上で、「ブラックペアンにおいて登場する治験コーディネーターとは、まったく非なるものであります」とし、「患者さんのために、医療の発展のために真摯に努力しているCRCの心を折り、侮辱するものであったと感じます」と厳しい言葉で批判をした。
実際のCRCの業務はスーツを格好良く着こなしたりレストランでの接待は100%ないといい、ドラマ内で「300万円」とされていた負担軽減費も実際には一回の来院あたり「7000円~8000円」。
これらの誤解について、日本臨床薬理学会は「ドラマだから、フィクションだから、という論法もわからなくはありませんが」としながらも、患者がCRCに対して不信感を持ってしまうことで今後の日本の医療の発展の損失に繋がる恐れもあると明かした。
また、「ドラマの演出上という言葉で片付けられないと私たちは考えます」とつづり、TBSに対して、「現状等を正しくご認識頂き、あまりにも現実と乖離した描写を避けて頂くよう希望する次第であります」としていた。
この抗議に対し、ガールズちゃんねるには次のような声が集まっていた。
「実際に働いている人が誤解されるのは可哀想」
「設定めちゃくちゃだよね。病院で働いてるけどありえないと思うところ多すぎるよ」
「そりゃフィクションだけど、いかにもリアルに作りました!って感じのドラマだからね。実際の仕事を誤解されたくないっていうのは分かるかも」
「最後にフィクションですと断りを入れてもドラマと現実を混同してしまう人もいるし…実際にその仕事についている人は腹立たしくなるのもわかります」
「普段関わる職業とか、有名な職業ならこんなんあり得ない、って分かるけど、治験コーディネーターってこのドラマで初めて知ったからな。仕事内容ちゃんと再現しないなら、わざわざこんなマニアックな仕事を取り上げなくて良かったのにね」
ドラマにおいて、リアリティの追求と演出のバランスは難しいところでもある。
職業として一般的によく知られている医師や警察などについてネガティブに描写されていたとしても、視聴者もある程度フィクションということを理解できるが、聞きなれない、馴染みのない職業では誤解される可能性を恐れるのは仕方のないことだろう。
「しょせんフィクションだし…」ドラマを擁護する声も
とはいえ、『ブラックペアン』はしょせんドラマ。
ノンフィクションを前提に作られているのは周知の事実ということもあり、抗議に対し疑問の声も集まっていた。
「今はドラマ作るのも難しい時代だね。フィクションでしょ?」
「ドラマだし…。これはフィクションですって出てるんじゃないの?そんなことでグチグチ言ってたらノンフィクションものしかやれないじゃん」
「あくまでも『フィクション』って理解出来るでしょ?ドラマなんだからさ。そんなこと言ったら他の医療ドラマだって刑事ドラマだってツッコミ満載だよ。いちいちこういう抗議があるからドラマがつまんなくなるんだよ」
『ブラックペアン』のエンディングには、「このドラマはフィクションです。登場する団体、名称、人物等は実際のものとは関係ありません」と明記されているものの、『ブラックペアン』を観て、普段接することのない“治験コーディネーター”という職業について誤解してしまう視聴者が出てしまう可能性は捨て切れない。
今後、『ブラックペアン』の設定が変更することはあるのだろうか。注目が集まる。
福田綾子(ふくだあやこ)
フリーのウェブライターで主にエンタメ記事を手掛ける。映画、小説、ドラマ問わずさまざまなジャンルに精通。ネットサーフィンで情報を収集して旬の話題を見つけ、読者の目線に立った記事を執筆する。