第4話「恋の天下一武道会」~連載・恥の多い恋愛を送ってきました~
ミスコンとは何のために存在するのか?
世の多くの方々はそう疑問に
思っており、
中にはその催し自体を『女性差別』と、不快に思う方もいるだろう。
その存在は賛否両論、様々な説があるが
今回は、ここで一つの答えを述べ
そういった不満を持つ方々に納得してもらおうと思う。
男性諸君は、男として生まれたからには
世界最強を一瞬でも夢見たことはないだろうか?
チャンピオンベルトを巻くことを夢見たことはないだろうか?
そう、女もそれは同様である。
そしてこの現代社会においてはその闘いの場が
ミスコンなのだ。
筆者は学生時代、
あまりのモテなさっぷりに日々悶々とし、
(私とて好きで尼僧のような生活を送っていたわけではない。)
環境が悪いのか、そもそも自分自身が悪いのかと思いあぐね、
研究室に配属されているというのにロクに学校にも行かず
己の力を確かめるべく
雑誌の読者モデルやミスコン出場にうつつを抜
かしていた時期があった。
(昨今流行の『ニート』というものに近いだろうか。時代の先取りである。)
大学は学問の場としては何不自由ないのだが
いかんせん、恋愛の場としては大変不自由な環境である。
…無論、そう言い訳をすることもできたかもしれない。
だが劣悪な環境のせいだけにせず
一般社会でなら自身の磨き上げた力が通用するのか否か、
どこかで確信が欲しかったのである。
今回はその時の経験を元に
そこから見えたものを書き綴ろうと思う。
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ミスコンの控え室は不思議な雰囲気に包まれている。
同質のもの(シンパシー)を感じ、すぐに打ち解ける者、
殺気を放ち他者を一切受け入れぬ者、
腕に自信があるのか他の者を見下し相手にせぬ者、
あたかも実写版・少年格闘漫画の様相を呈している。
……それは5年前のこと。
私は『最後のチャレンジ』である
某ミスコンの地区予選大会に出場していた。
万全のコンディションで挑んではいたが、
やはり毎回ながら、そのミスコン特有の張り詰めた雰囲気は苦手であった。
私はその空気に絶えかね
出場を待つ間の控え室から外部の友人へとメールを送ってみることとした。
『オッス!オラ、ニート!』
『ここには日本中から強え奴らが集まってくるんだ!
……でも、よく見たら弱そうなのもいます。』
……少々マニアックすぎたためか
友人からの返信は来なかった。
また、いらぬことをして集中力を欠いたためか、
そもそも実力不足だったのかは今となってはわからないが
この後の質疑応答では全く質問に答えられぬこととなり
最後のチャレンジはあっさり地区予選大会落ちとなったのである…
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この様々な猛者が集うミスコンであるが、
そこで繰り出されるドラマは出場者の心を捉えて離さない、大変ドラマティックなものだ。上記体験談で控え室の空気を説明したが、
大抵の場合は少年格闘漫画と同じく
殺気を放ち他者と交わろうとしない者は、まず途中で敗退する。
(筆者はこれを一種の敗者フラグであると考えている。)
無論、意外な登場人物が勝ち上がることもある。
派手な必殺技(一芸)を繰り出し、見せ場を作る猛者もいる。
有名な道場(ミスコン)荒らしで、優勝候補と思われていた者が無名の新人に競り負けることもある。
決着の行方は最後の最後まで予想すらできない。
また、ミスコンでの勝敗は
単純に美しさ(強さ)だけでは決まらないのも少年格闘漫画と
同様である。
(無論『美しさファクター』の重要度は、ミスコンの種類によって大きく異なる)
それまでの己の経歴や外面だけでなく、
どれだけ聴衆を前にしたステージ上で己を力強く美しくアピールできたか…
独特の空気に飲まれずに、冷静に己を保ち続けることができるのか…
華やかな舞台の裏で繰り広げられるそれら心理戦、
そして己に勝った者のみが真の勝利者となりえる。
そう、実際のミスコンの舞台は少年格闘漫画以上に
展開が全く予想できない激しく険しいものと言えよう。
つまり、
女にとってのミスコンとは、
男にとっての天下一武道会のようなものなのである。
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なお、激闘を演じたミスコン終了後、
そこでの強敵がその後、永きにわたって
よき友となりやすいのも大きな特徴である。
少年格闘漫画同様に、
死闘によって深く心を通わせあいやすいのであろう。
ミスコンの舞台から降りた後も、
互いの女としての人生に大きく影響を与え続ける存在となることが多々あるのだ。
(自分が主人公と同じポジションでは決してないのが、漫画と異なる部分であるが・・・)
そんな険しく美しいミスコンの舞台を後にして5年後、
ある日、筆者の下にかつての強敵(とも)から一通のメールが届いた。
『本部ちゃんへ。
元気にしていますか?
こちらは彼からプロポーズを受けまして、今度結婚することになりました^^v☆』
『彼はすっごく背が高くてかっこいいスポーツマンで大会社の御曹司!
私のこと、超大好きで大切にしてくれる最高の王子様です☆』
……
…………。
あのステージに上がっていた時までは
私たちは同じライン上にいたはずだ。
……しかし、今のこの差はなんだ……?
どうやら私はいつの間にか、少年格闘漫画でいうところの
『メインキャラ』どころか『解説キャラ』
的ポジションになってしまっていたようである。
死闘を終えた後の物語が自分中心に華やかに回るというところだけは、
漫画の世界と現実とは大きく異なるということだろうか。
こうして、舞台を降りて数年後、
筆者は再び後塵を拝することとなり、
『メインキャラ』となるべく、修行の道を邁進することと
なったのである。