fbpx

アラサー女子のエッチなエピソード大賞!「一夜だけ結ばれた運命の人」後編

女子のみなさんから募集した「女子のエッチなエピソード」大賞。グランプリを受賞したエピソードが小説家・瀬音はやみさんにより小説になりました!>

今回のテーマは「どうしても一緒になることができない2人~ 切ない最後のセックス」。是非ご堪能あれ!> 

女子のエッチなエピソード大賞!「一夜だけ結ばれた運命の人」後編

突然、車中で泣き出した私。ハッキリと言葉にはしなくても、想いを告白したも同然だった。
きっと弦にもそれは伝わったのだろう。彼はフロンドガラスをぼんやり見つめ、言葉を選ぶように語り始めた。
「自分でもどうしたものか、自分を持てあましかけていたのだけど――気がついたら、いつも君のことを考えていた」
驚いたことに、じつは彼も私のことを想っていたというのだ。そしてバツイチであることも打ち明けた。
「年甲斐もなく、熱を上げてしまったことが恥ずかしいような気がして。本当は、こんなことを言うべきではなかったんだが」
自信家の彼が初めて見せるとまどい。ようやく収まりかけた感情が、私の胸にこみ上げてくるのを感じた。
彼は長く息を吐いてから続けた。
「だから、彩夢ちゃんの気持ちは俺もうれしい。けど――」
私は彼にみなまで言わせず、思わず彼の胸に飛びこんでいた。
「好き。好き。好き……」
やっと言葉にできた想い。私は彼にしがみついた。まるで波にさらわれてしまうのを恐れるみたいに。

千々に乱れた感情が胸を渦巻いていた。
「私は運命の人を見つけてしまった。だけど、こんなタイミングでなぜ――」
世界の不幸を一身に背負った悲劇のヒロインみたいに、苦しくて、切ない。これが、本当に人を好きになると言うことだろうか?
弦は黙って私の髪を撫でてくれていた。そうされると、少し落ち着くように思える。
流れる沈黙。互いの思いはひとつなのに、二人ともどうしたらいいかわからない。
「弦さん――?」
やっと顔を上げた私は、言葉にならない大きな問いを彼に投げかけた。
すると、彼は苦しそうに微笑みながら、指先でそっと私の涙を拭う。そして迷いを振り払うように、重い口を開いた。
「彩夢ちゃんの幸せを壊したくない。俺を忘れて結婚するんだ」
その言葉は私を暗い穴に突き落とし、どこまでも墜ちていくように思わせた。

彼が言うのが正しい。頭では分かったつもりでも、心が割り切れそうにない。
「彩夢ちゃん――?」
彼の悲しそうな目が私を見つめる。
もし、彼の言うとおり、このまま結婚しても私は幸せになんかなれないだろう。それは理屈などではなく、直感が強く心に訴えてきたのだった。
私は息を整えてから、彼の目をまっすぐ見つめて言った。
「わかった。あなたの言うとおりにします……だけど今日だけ――ううん、今夜だけは夢を見ていたい」
お願い、瞳をそらさないで。覗きこんだ彼の瞳の奥に、私はふと揺らぐものを見た気がした。
「最初で最後の夜……になっても構わないっていうのか」
彼の問いに、私は小さく頷いた。

彼の家には行かなかった。そうすれば、彼の家に思いを残していくことになるから。
だから、それから私たちはそのまま車でホテルに行った。
ベッドに横たわり、服を脱いだ二人に言葉はいらなかった。
「彩夢、愛してる」
「私も……」
見交わした目と目で熱い想いが通い合う。
こんなに短い間に愛は募り、焦がれ求めた彼の腕が、私の体をかき抱く。
――そして、キス。
漏らす吐息は思いの丈を伝え、侵入してきた彼の舌を、私は自分でも意外なほど情熱的に受けとめていた。
「彩夢……」
彼が私の名を呼ぶ声にやさしく愛撫されて、体中がカッと熱くなる。
やがて彼の手が、私の髪を梳き上げるように差し入れられ、うなじを熱い舌が走ると、彼の短い髪の匂いが鼻をくすぐった。
(私は生涯、この匂いを忘れないだろう)
そんな切ない思いに駆られていると、彼の手もまた、私の記憶を焼きつけておこうとするみたいに、やさしくも力強くまさぐるのだった。
「ああっ、弦さん!」
ついに彼の手が私の秘部をとらえた。溢れかえる情熱が奔流のごとく湧き出で、私は恥ずかしさとともに、得も言われぬ開放感にうち震えた。
(私、恐い!)
これまで経験したことのない激しい官能に恐れをなし、私はわれを忘れて彼の唇を求めていた。
「愛してるよ、彩夢」
「弦……っ!」
やがて彼の屹立が狂おしげに分け入ってきた。体内が満たされたと感じたとたん、駆け上ってきた快感に、私の頭の中でなにかがはじけ飛んだみたいだった。
「私を離さないで。しっかり捕まえていて。お願い!」
自分の矛盾した言葉にも気づかないまま、私は彼のリズムに合わせていた。
もう後にも先にもこれきりなのだ。そんなことが脳裏をかすめるたび、苦しいけれど、この瞬間を貪るように悦びの声を上げていた。
「彩夢っ!」
彼は息づかいと同じように動きを早めていく。一夜限りの夢。絶頂はもうすぐそこまで近づいていた。
「弦も、きて。私もう……あああっ!」
「あやめーっ!」
それは、これまで感じたことのないほど激しい絶頂だった。
決して結ばれることのない運命の人と、こうして私は一夜だけはかなくも熱く結ばれたのだった。おそらく生涯忘れることができないほど切ない喜びに身も心も焼き尽くして。

それから3週間後、私は正道と無事結婚式を挙げた。周りの人たちにも祝福され、ついに私は10年越しの”純愛”を実らせたのだ。
「キッチンの内装が終わったら、お義父さんたちを招待して、一緒にディナーっていうのはどうかな」
「そうね。きっとお母さんも喜ぶよ」
今でも自分の選択は間違っていなかったと思う。たしかに平凡だけど、夫はやさしいし、家庭を築く幸せも感じているから。
きっと弦とのことは、これから先も忘れられないだろうし、無理に忘れようとも思わない。ただ、自分の胸だけに深くしまいこんだままにして、締めた鍵を2度と開けるつもりがないだけだ。

編集部
編集部

女性の生活スタイルやキャリア、社会的課題における有益な情報を提供したい。

>> article
この記事を読んだ人におすすめ