第5話「恋のニッチ戦略」~連載・恥の多い恋愛を送ってきました~

「カッコイイ彼氏」と「カッコ悪い彼氏」
どっちが欲しい?と聞かれたら大抵の人は前者を選ぶであろう。
私も当然一抹の迷いもなく前者を選ぶ。
しかし、カッコイイ彼氏は当然、自分以外の女にも
魅力的に映るため、
その誘惑に惑わされることも少なくない。
つまり「カッコイイ彼氏を持つ」ということは、
同時に「他の女からの脅威に晒され続ける」というリスクも孕んでいるのである。
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以前、友人がイケメン医学生と付き合っていたことがあった。
この友人自身も可愛く、かつ頭が良く
もちろん彼氏ともラブラブだったのだが、
それでもやはり他の女からの脅威に怯える毎日だったようだ。
彼は医者の卵のため、周りは白衣の天使だらけである。
彼女は理系の学生だったため、
常に白衣は着ていたが
コチラの白衣はマニアックな男性にしかウケないため少々分が悪い。
(しかも扱う相手がヒトではなくマウスである。)
もちろん、白衣の天使達も大きな脅威ではあったが
彼女にとっては実際に彼と触れ合うことのできる女達……
そう、患者こそが真の脅威と映っていたのである。
彼が研修医になるとき、
将来どこの科にいくかという話になった。
科によって、訪れる患者の層は全く異なるため、
彼女にとってその配属は、今後を左右する大きな問題である。
彼女が私の元に、彼がどこを選べばいいのかと
相談に訪れてきた。
私は、女性の患者が少ないであろうということで
「泌尿器科」を勧めた。
すると彼女は
「男のモノ触った手で、私のことハグとか絶対ヤダ!」
と激怒。
続いて私は「眼科」を提案してみた。
すると彼女は
「彼に目覗き込まれたら『あ~ん、抱いて~!』ってなっちゃうに決まってるじゃーーん!」
と、やはり激怒。
それでは…と、私は「耳鼻科」はどうかと聞いてみた。
すると彼女は
「彼に耳なんか触られたら感じちゃうじゃん!!」
とのお答え。
じゃあ、成人の来ない「小児科」は?と問いてみた。
すると彼女は
「そういう中途半端な年の色気づいたガキが一番危ないんだよっ!!」
と、ついに大激怒。
……まぁ、本当にそうなるであろうかは別として、
通常の医者ならば心配しなくてもいいところである場面も
カッコイイ彼の場合は危険性を孕んでしまうようである。
これらから考察すると、
「カッコイイ彼氏」
を持つことによる利益(満足度)と
「他の女性からの脅威」
により彼を損失する危険性(リスク)
の経済的解析は、恋愛においても行えるのかもしれない。
そう考えたらマニアックな好みの女性ほど、
その競合の少なさによりリスクも小さくなるため
得られる利益も大きくなるのだろうか。
しかし、好みがマニアックすぎては
その条件に合致する男の数がごく少数であるような
環境下におかれた場合、対象を確保すること自体が困難となってしまう。
……そんなわけで、カッコイイ彼氏を持つことも
マニアックな好みに合致する彼氏を持つことも
やはり、それぞれリスクを持っているのかもしれない。
恋愛は、どのようなケースでも簡単にはいかないものである。