fbpx

西の魔女が死んだ/梨木果歩著(2001年・新潮社刊)

素直に好きと伝えられないあなたへ

「わたしはもう学校へは行かない。あそこは私に苦痛を与える場でしかないの」

中学校に通えなくなったまいは、森に囲まれた民家に住む「西の魔女」と呼ばれている祖母の家で過ごし始めます。

魔女の力があるというイギリス生まれの祖母は、共に生活する事になったまいに魔女の手ほどきをはじめます。

美しい自然の中で成長していく思春期の少女。
しかし、閉ざしていた心が開くほどに、なぜか祖母に対して素直な感謝や好きという言葉が言えなくなっていきます。

西の魔女が死んだ
梨木果歩の描く、自然と生活が交わる時間の描写は、心地のいいものばかりです。 目の前に広がるワイルドストロベリーをバケツ一杯拾って作るジャム。

銀細工のような蘭、銀龍草を一輪ざしに挿して死んだおじいちゃんの遺影の前に飾る時間。 東京で一生懸命に働く女子にとってはうらやましくもある原風景が、読むほどに心の中に滑り込んできます。

タイトルにある通り、ある日まいの祖母に死が訪ずれます。 しかし、その祖母が最後にまいに残したメッセージが感動的。 最近死によって感動を誘おうとする恋愛小説が多いけれど、この死は全く違います。

そこには人間の成長が凝縮されています。 あまりにも粋な終わり方に、感動でホロリときてしまいますが、それはとても爽やかな涙になるはずです。

今素直に好きと言えない人がいたら、ぜひ読んでみてください。 大切なのは伝え方ではなく、その気持ちだということ。

これを読み終わった後、きっと大切な人に「あなたが好き」と言えるようになりますよ。 このお話の主人公は中学生ですが、素直になれない女心はいくつになってもかわらないものですからね。

編集部
編集部

女性の生活スタイルやキャリア、社会的課題における有益な情報を提供したい。

>> article
この記事を読んだ人におすすめ