おもたせ暦/平松洋子著(2010年・新潮社刊)
久々に会うあの人に、どんなおもたせを渡したらよいか悩んでいるあなたへ
友人が住んでいる街で、仕事の打ち合わせが入る。彼女とはしばらく会っていなかった。
よし、せっかくだからその帰り、彼女にも会いに行こう。
「ちょっと仕事の用事があって、この近所まで来たの。よかったらこれどうぞ」
そう言いながらおもたせを渡す。「あら、時間ある?上がっていってよ。美味しいお茶があるのよ」
それを聞いた私はにんまりする。そう、いま渡したおもたせ、実は私も一緒に食べたかったの。
お土産でも手土産でもない「おもたせ」。その言葉にはふっくらとした優しさがあります。
選びに選んだおもたせは、時に驚かれ、時に期待され、時に失敗もするけれど、そもそも相手の笑顔を想像しながら選んだ品は、その相手を傷つける事がありません。
そして、消えものである食べ物だからこそ、誰かを思いやる暖かい気持ちだけが後にそっと残ります。
この「おもたせ暦」では、フードジャーナリストの平松洋子氏が、実際におもたせとして渡した品々を紹介しています。
名店、逸品から手作りの物まで様々ありますが、日付や渡した時のシチュエーション、おまけに包装された状態の写真まで付いています。
そのおかげで、実際に自分がこれから会う人と照らし合わせて、おもたせを考えることが出来るのです。
手作りの品にはレシピが付いているし、店頭で買えるものに関しては、巻末に連絡先と地図まで付いているという、とても親切なこの本。
この細やかな親切心がおもたせの本質なのかもしれません。この本、今や私のおもたせのタウンページとなっています。
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