【毒舌独女】焼肉酒家えびす社長とフラストレーション
久々にキャラの立つ素人さんがテレビに登場した。
焼肉酒家えびすを経営するフーズ・フォーラスの社長、勘坂康弘氏だ。
自社が提供した和牛ユッケで食中毒死亡者が出ているにも関わらず、5月2日の記者会見では叫びながら逆切れ謝罪。
未だかつて、あのような謝罪会見を開いた人物がいただろうか。
誠意の微塵も感じさせない、ある種の清々しささえ覚えた。
更に、日本における生肉事情にも言及。
厚生労働省のお墨付きのある生食用牛肉は、現在、流通していないことを教えてくれた。
「生食用としての(出荷)実績はアリマセェン!」と怒鳴りながら。
(カッコは補足)
そして、こうも言った。
「普通の精肉を、ユッケで出しているのを(法律で)全て
禁止して。
禁止すればいい。
禁止すべきだと思います。
禁止していただきたいと思います」
禁止の四段活用を使ってまで、法律で取り締まってもらいたいらしい。
これで、日本全国のユッケを出しているお店や、食肉卸から、完全に嫌われたね。
敵に回したと言い切っても、過言ではない。
今まで暗黙の了解だったのに。
言いたいコトは判るよ。
要約すると、
みんなと同じ肉を提供して、どうして自分の店だけこんな事件が起きたんだ!って感じかな。
それとも、
みんな同じ穴のムジナ、一蓮托生、みーんなお縄にかかってしまえ!かしら。
まぁ、何にせよ、この時点で死亡者2名を出している店の経営者が口にする文言じゃない。
いくら会社に「人殺し!」という嫌がらせメールが沢山届いて、パニックに陥っていたとしても、何とか冷静に対応するのが、社会人であり、トップに立つ人間のあるべき姿だ。
しかし、同情する点はある。
恐らく、「人殺し!」メールの送り主の大半は、それまでの顧客ではなく、焼肉酒家えびすに足を運んでもいない人物だろう。
勿論、勘坂康弘氏と面識は無い。
フーズ・フォーラスと勘坂康弘氏は、
震災、原発と、不安が続くこのご時勢、大衆のフラストレーションの捌け口にされた可能性がある。
ぼんやりとした不安を、カタチのある不安にすり替え、憤りを具体的にすることにより安心する人物は多い。
震災直後の買占めパニックも、不安のすり替えだ。
不要な物まで買占め、安心を得ようと試みた。
言葉に表すと、馬鹿げたコトと判るが、これが人間。
脆い部分があってこそ、人間かも知れない。
実は、この不安のすり替え、勘坂康弘氏も行っている。
怒鳴りながらの記者会見、これは明らかな不安のすり替え行動。
不安でたまらないからこそ、威嚇の為、怒鳴り、叫ぶ。
これらの行動で自分を守れないと判ったら、今度は大げさに嘆き、詫びる。
5月5日の記者会見では、土下座までして、被害者と遺族に謝罪した。
彼の一連の行動は、全て、不安から自分を守るものであるように、私は見えた。
一見、勘坂康弘氏の数日での豹変振りはパラノイア的であるが、「不安」というキーワードを当てはめると、納得が付く。
納得が付いても、経営者としては、やっぱり、バッテン。
焼肉屋の経営者が、生肉に対する不安を煽るようなことを口走っては、大衆の不安はより大きく膨らんでしまう。
彼の言葉は、日本国中の焼肉ファン、ユッケファンを混乱に陥れた。
正しい知識が得られたから良いとする人も居るだろうが、不安になった人の方が多い筈。
現に、ユッケの販売を自粛する店が出てきている。
適切な調理法でユッケを作っていた店も、風評被害を受けているのだ。
焼肉酒家えびすの被害者は、食中毒被害者だけに留まらない。
自粛を余儀なくされている焼肉・韓国料理業界全体も被害者。
最後になったが、命を落とされた方のご冥福を祈ると共に、現在、闘病中の方々の早期回復を願って止まない。
コラムニスト/コンテンツライター
広島県安芸郡出身、大阪府高槻市在住。恋愛記事から豆知識、果てはビジネス文書まで幅広く執筆するライター。古典芸能に携わっていた経験もあり、日本文化について少し詳しい。文芸春秋『週刊文春』に載せてもらえたのが人生の自慢。
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